取出機の性能は、アームの速度や精度だけで決まるものではありません。成形品を直接保持する「チャック」の性能も、生産性や品質、設備の安定稼働に大きく影響します。チャックの選定や設計が適切でない場合、製品の落下や変形、位置ズレなどのトラブルにつながる可能性があります。
本記事では、取出機におけるチャックの役割や種類、重要性を解説するとともに、セーラー万年筆ロボット機器事業部のチャックの特長について紹介します。
▼この記事のポイント
- 取出機のチャックとは、金型から製品を取出して所定位置まで搬送する間、製品を把持するアーム先端機構(EOAT)である
- チャックの役割は「把持」だけでなく、「製品の取出し確認(製品検知)」「精密な位置決め」「チャック内加工・ピッチ変更」の4つがある
- 主な種類は吸盤チャック・ブロワーチャック・メカチャック・複合タイプの4つで、製品形状や搬送条件に応じて選定する
- 金型内への製品の取り残しを検知する「製品検知」は、金型保護に直結する重要機能である
- セーラー万年筆ロボット機器事業部は「重力に頼らない確実なハンドリング」の設計思想と半世紀以上の実績で、多数個取りや難易度の高い取出しにも対応する
取出機におけるチャックとは?
取出機におけるチャックとは、取出機が金型から製品を取出して所定の位置まで移動する間、製品を把持するためのアーム先端機構です。
ロボット業界では、アーム先端の機構全体を「エンドエフェクタ」、その中で把持を担う機構を「ハンド」と呼びますが、セーラー万年筆ロボット機器事業部では、こうした把持機構を総称して「チャック(End Of Arm Tool: EOAT)」と呼んでいます。
まず、チャックの基本的な役割を説明します。
チャックの基本的な役割
取出機チャックの主な役割は製品を把持することですが、それだけではありません。主に、以下の4つの役割を担っています。
- 成形品を把持する
- 製品の取出し確認
- 精密な位置決めをする
- チャック内で加工やピッチ変更を行う
成形品を把持する
チャックの基本的な役割は、成形品やランナーを成形機内部から成形機の外に運ぶまでの間、確実に保持することです。射出成形直後の製品は高温で柔らかく変形しやすいため、ワークの形状や材質に合わせた把持力で、適切なポイントで保持する必要があります。
また、アームは製品を把持したまま高速で金型内から成形機外側のコンベヤや次工程装置まで移動して受け渡すため、アームの加減速による力で製品が落下しないだけの把持力が必要です。
製品の取出し確認
チャックには通常製品をきちんと掴んだかどうかを確認するためのセンサーが取り付けられています。
把持に失敗して製品が金型内に残った場合、センサーの信号によって成形機を停止できます。これにより、製品が残ったまま型が閉じて金型が破損するトラブルを防げます。
精密な位置決めをする
金型内への部品インサートや、二次加工装置への受け渡しがある場合、チャック内に位置決めピンや、「コンプライアンスモジュール(※)」を設置して精密な位置合わせをすることができます。
※位置決めピンを設置した場合、インサートや部品受け渡しの瞬間にチャック全体がピンにならって動くことで位置ずれを吸収する必要があります。このための機構をコンプライアンスモジュールと言います。
チャック内での加工、製品ピッチ変更
チャック内にシリンダーなどの駆動機構を内蔵して、製品ピッチや配列を変更して次工程に受け渡すことも可能です。また、ニッパーを設置してランナーカットを行ったり、検査機能を内蔵することもできます。

取出機チャックの主な種類
取出機に使用されるチャックには、ワーク形状や搬送条件に応じて複数の種類があります。主に以下の4種類があり、それぞれ適した用途が異なります。
- 吸盤チャック
- ブロワーチャック
- メカチャック
- 複合タイプのチャック
製品に適したチャックを選定することで、安定した搬送が可能になります。
※異なるタイプのチャックを使用するためには、取出機本体の改造が必要になる場合があります。
吸盤チャック
吸盤チャックは、真空パッド(吸盤)を用いて成形品を吸着する方式のチャックです。装置本体に設置した真空発生装置(エジェクター)により吸盤内の空気を吸引して負圧(真空)状態を作り、大気圧との圧力差によって製品を吸着して把持します。真空発生装置とその配管が必要ですが、通常取出機に標準で装備されています。
吸盤チャックを製作する際は、まず吸盤の種類と位置、個数を決め、骨組み(ネジックレール等)を利用して吸盤ユニットを配置して配管をつなぎます。製作は他のタイプに比べて比較的容易です。
ただし、吸着タイプを使用するためには、製品に吸盤で吸着できるなめらかな吸着面が必要です。表面にシボがある製品や、十分な吸着面の確保できない製品では、吸着力が不足する場合があります。
ブロワーチャック
ブロワーチャックは、吸着タイプの一種です。大きなブロワーモーターを用いて掃除機のような仕組みで製品全体を吸引します。
吸盤で吸着するには小さすぎる製品や、表面に平らな面がない製品等の場合に使用します。取出機本体に太いエア配管を設置する必要があります。
ブロワーチャックは、製品の形にくぼみのある吸い口を設置したもので、吸盤と違って製品とチャックの間から空気が多少漏れても大丈夫です。
メカチャック
メカチャックは、爪やクランプ機構をエアシリンダで駆動し、成形品を物理的に挟み込んで把持する方式です。真空吸着だけでは保持が難しい重量のある成形品や、複雑な形状のワークに使用されます。
機械的に挟み込むため把持力が高い一方、製品表面に傷や圧痕が残る可能性があります。
複合タイプのチャック
吸盤による吸着とブロワーチャック、メカチャックを1つのチャック内に組み合わせたものです。それぞれの方式の特長を活かし、安定した取出しを実現します。
例えば、吸盤で製品本体を保持しながら、メカチャックでサブマリンゲートのランナーを把持する使い方があります。また、ブロワーチャックで製品を吸着しつつ、吸盤でランナー部分を保持する構成もあります。

チャックにおける製品検知
製品を金型から確実に取出したか、すなわち金型内に製品が残っていないことを確認することもチャックの大切な役割ですが、この製品検知にもいくつかの方法があります。
吸盤チャックの場合
吸盤チャックの場合には、配管に圧力センサーを取り付けて、この圧力を見る方法が利用されます。きちんと吸盤が吸着していれば真空度は上がり、逆に製品を落としたりして吸盤が大気解放されると真空度が上がりませんので、この圧力差を利用して検出します。
ブロワーチャックの場合
ブロワーチャックの場合には、製品を吸着させたときとそうでないとき(多数の製品の一つでも落下した時)の圧力差が十分あるのであれば検知できます。圧力差があまりない場合には、レーザー光を使ったセンサーを使用する場合もあります。
メカチャックの場合
メカチャックの場合、チャックの爪の位置を、シリンダに取り付けたセンサーで検出して、きちんと製品を掴んだかを検知する方法があります。また、メカチャックの爪などに製品検知用の吸盤を設置して、上記の圧力差により検出する方法も使用されます。
このように、チャックを設計する上では、どのように製品検知するかということも、どのように把持するかと同じように重要です。
セーラー万年筆ロボット機器事業部のチャックの特長
チャックの性能は、成形ライン全体の効率にも関わる重要な要素です。セーラー万年筆ロボット機器事業部では、多様な成形条件やワーク形状に対応できる独自のチャックを展開しています。ここでは、セーラーならではの特長や対応力を紹介します。
セーラー独自のチャック設計
セーラー万年筆ロボット機器事業部では、ワーク形状や成形条件に最適化したチャック設計を行っています。特に、製品を確実に保持し、安定した搬送を実現するための設計思想を採用している点が特長です。
セーラー万年筆ロボット機器事業部の装置設計においては、基本的に重力を利用しない方針を採用しています。つまり、製品を移動させる際に落下や滑りを利用せず、アームとチャックを移動先まで搬送して、所定の位置に置いてから開放しています。製品がガイドのない状態で空中を移動する時間を短縮し、摩擦力に依存した搬送を極力避けることで不安定要素を低減し、安定した搬送を実現しています。
同様の設計思想から、チャック形状や把持方式も、製品を確実に把持・検知できるよう、信頼性を高めています。取出機本体の高い剛性や制振性能と組み合わせることで、高速取出しや100キャビティを超える多数個取り金型にも対応可能です。

また、半世紀以上にわたり自動化装置を製造し、カスタムチャックを設計・製作してきた実績を活かし、難易度の高い取出しにも対応できる最適なチャック設計をご提案しています。
お客様でのチャック製作も含めた部品・アイテム展開
お客様ご自身でチャックを製作するためのパーツも揃えています。特に、レールを用いたチャックについては汎用性も高く、金型のゲートの種類や置く向き等によってセットになった製品も揃えていますので手軽にお試しいただけます。
ピンゲート、ホットランナー金型用チャック
ランナー部分を掴む必要が無いため、シンプルな構造のチャックです。チャック回転の方式、偏芯の有無によりいくつかのタイプがあります。
80タイプチャックユニット

80タイプチャックユニットは、D型水平制御(チャック水平制御)に対応した汎用チャックユニットで、ピンゲート・ホットランナー金型向けのチャックです。ランナーを把持する必要がないため、比較的シンプルな構造となっており、製品を安定して保持し、確実な搬送を実現します。
83タイプチャックユニット

83タイプチャックユニットは、偏芯無しの場合の、A型水平制御(チャック水平制御)対応の汎用チャックユニットです。
トンネルゲート、サイドゲート等金型用チャック
ランナーも同時に取り出すため、メカチャック方式のランナーチャックを内蔵しています。
81タイプチャックユニット

81タイプチャックユニットは、D型水平制御(チャック水平回転制御ユニット)に対応した、トンネルゲートやサイドゲート金型向けの汎用チャックユニットです。ランナーを一緒に取出すためのメカチャックを内蔵しており、製品とランナーを同時に保持できます。
※トンネルゲートやサイドゲート金型において、安定した取出しをサポートします。
82タイプチャックユニット

82タイプチャックユニットは、偏芯無しの、A型水平制御(チャック水平制御)対応汎用チャックユニットです。トンネルゲート金型等に対応しており、スプルーを掴むためのメカチャックを備えています
84タイプチャックユニット

84タイプチャックユニットは、A型水平制御(チャック水平制御)に対応した、トンネルゲート等の金型向けの偏芯有りの汎用チャックユニットです。偏芯により、金型条件や製品条件に応じた位置調整が行えます。
実際に、どのタイプを選定すれば良いのかは、成形機・取出機・金型の大きさなど、使用条件によって異なります。お気軽にご相談ください。
まとめ
取出機におけるチャックは、成形品を把持するだけでなく、製品を確実に取出したことを確認する役割も担っており、金型を保護するうえで重要な機能です。チャックには吸盤チャックやブロワーチャック、メカチャックなどさまざまな方式があり、それぞれに特徴や適した用途が異なります。
適切なチャックを選定することで、安定した生産や高精度な搬送につながります。セーラー万年筆ロボット機器事業部では、高い信頼性を重視したチャック設計と豊富な部品ラインアップにより、多様な成形現場に対応しています。用途や成形条件に応じた最適なチャックをご提案しています。
チャックの選定や設計にお悩みの際は、ぜひセーラー万年筆ロボット機器事業部にご相談ください。ピンゲート・ホットランナーからトンネル・サイドゲートまで、金型やゲート形状に合わせた汎用チャックユニットを取り揃えているほか、100キャビティを超える多数個取りや難易度の高い取出しに対応するカスタムチャックの設計・製作も承っています。
半世紀以上にわたり自動化装置を手がけてきた実績をもとに、貴社の成形現場に最適なチャックをご提案します。まずはお気軽にお問い合わせください。