製造業では、人手不足への対応や生産効率の向上を目的として、製造工程の自動化が進んでいます。「自動機(自動化装置)」は、人が行っていた作業を自動化し、生産ラインの省人化や品質の安定に貢献する設備です。製品の搬送や検査、組み立て、包装など、さまざまな工程で活用されており、現在では多くの製造現場に欠かせない存在となっています。
今回は、射出成形分野を中心に、自動機の基本的な役割や種類、導入するメリットについて詳しく解説します。
▼この記事のポイント
- 自動機とは、人が行っていた製造工程を自動化する設備で、生産性の向上・品質の安定・省人化に貢献する
- 射出成形における自動機は、成形前の準備を担う「前工程機」と、成形後の搬送・検査・梱包などを担う「後工程機」に大きく分けられる
- 自動機を導入するメリットは「生産性向上」「品質の安定」「人手不足対策」「安全性向上」等
- 特にクリーンルームではコンタミネーションリスク低下のメリット
- セーラー万年筆ロボット機器事業部は、3,800件を超える自動機の実績をもとに、ニーズに合わせた自動化装置の設計・製作を行っている
▼セーラー万年筆ロボット機器事業部の自動機
自動機とは
自動機(または、自動化装置)とは、人が行っていた製造工程を自動化するための設備です。製造現場では、生産性や品質の向上、省人化を目的として幅広く導入されています。
産業用ロボットとの違い
産業用ロボットは、労働安全衛生規則第36条第31号で次のように定義されており、マニプレータの存在が大きな特徴です。
マニプレータ及び記憶装置(可変シーケンス制御装置及び固定シーケンス制御装置を含む。)を有し、記憶装置の情報に基づきマニプレータの伸縮、屈伸、上下移動、左右移動若しくは旋回の動作又はこれらの複合動作を自動的に行うことができる機械
汎用の産業用ロボットは、教示により多様な作業に対応できる反面、マニプレータの必要のない特定の反復作業に限れば専用機に速度や効率で及ばない場合があります。
決まった工程を効率よく自動化したい製造現場では、専用機として設計された自動機が適している場合が多いです。
自動機を導入するメリット
自動機を導入することで、次のような効果が期待できます。
- 生産性の向上
- 品質の安定
- 人手不足への対策
- 安全性の向上
- コンタミネーションリスクの低下
生産性の向上
人が作業する場合に比べて、単純作業を繰り返すことに関しては機械のほうが速い場合が多いため、時間あたりに処理できる量が増加します。また、24時間稼働させることができ、昼だけの場合に比べ処理量は大幅にアップします。
品質の安定
自動機は設定された条件に従って高い精度で(繰り返し精度:典型的にはばらつき0.1mm 以下)同じ動作を繰り返します。
手作業では作業者の経験や技術、その日の体調などによって位置の正確さやスピードに差が出る場合がありますが、自動化することでこのようなばらつきを防ぐことができます。例えば、インサートフィルムを手で金型内に挿入している場合、どうしても位置ずれ、ペースの乱れなどが発生します。
一方、インサートフィルム供給機(自動機)で用意したフィルムを取出機により金型に挿入するシステムを構築することにより、高い位置精度で、同じタイミングでフィルムをインサートすることができ、完成した成形品の品質は大きく向上することが期待できます。
人手不足への対策
製造業では、人手不足が課題となっていますが、自動機を導入することで、単純作業や繰り返し作業を人から機械へ置き換えることができます。
成形工場では、成形機の金型から成形品やスプルー(金型の樹脂注入路で固まった不要部分)を取出す作業が必要になります。人手で行った場合、取出しだけでも成形機1台につき1人の作業者、さらに検査や箱詰めなどを行う場合には、1ラインにつき3名以上、交代要員も考慮するとこの数倍の人員が必要になります。
人から機械に置き換えることにより、一人で成形機数台~数十台以上のラインを管理することができるようになり、作業者に関しては数十人規模の削減となります。
安全性の向上
危険を伴う作業や身体的負担が大きい作業を自動化することで、その工程の安全確保につながります。
1970年代には射出成形品の取出しはまだ人手に頼る場合が多く、年間数百件の金型に挟まれる事故が起きていました(※資料1~3からの推定)。自動取出機の普及に伴いその数は減少し、現在ではほぼゼロとなっています(現在9割以上の成形機に取出機が使用されています)。
このように、射出成形機の金型からの取出しという危険な作業を人間が行わなくなったことで、この工程の安全性は大きく前進しました。同じように、現在人の手で行っている作業を自動化することで、危険空間に人間が立ち入る機会を減らすことができ、事故のリスクが大幅に減少します。
コンタミネーションリスクの低下
食品や医療関係、精密機械など、クリーンルームで行われる生産においてはコンタミネーション(ほこりなどによる汚染)をできる限り防ぐ必要があります。
特に人体は毛髪やフケ、呼気や汗などを伴う大きな汚染源であることから、内部での作業者を含む人間のクリーンルームへの入室をいかに少なくするかが、クリーン度を保つうえで重要となります。
従って、クリーンルーム内部の生産工程を自動化することにより、人間に起因するコンタミネーションのリスクを抑えることができます。
プラスチック射出成形における自動機
自動機は、導入する工程や目的によってさまざまな種類があり、一般的にユーザーのリクエストに応じて設計されます。射出成形分野では、成形前の準備を行う前工程機と、成形後の処理を行う後工程機に大きく分類することができます。
前工程機
成形前工程では、製品を成形する前の準備作業を自動化します。インサート成形(部品を金型内に入れて樹脂と一体で成形する方法)においては、金型に埋め込むためのインサートワーク(ラベルや金属部品など)を用意します。
ラベル供給機
ラベルインサート成形において、取出機によってラベルを金型内に挿入する前段階として、このラベルを取出機のインサート用チャックに供給する装置が必要になります。
ラベル供給機は、あらかじめセットしておいたラベルストッカーからインサートラベルを吸着し、金型のキャビティ位置(=チャックの吸盤位置)に合わせてピッチを修正しながら取出機のラベルインサート用チャックへ受け渡します。
人によるラベル供給作業を自動化することで、作業時間の短縮や位置精度の向上が期待できます。
インサートメタル供給機
ラベルインサートと同様に、メタルインサートにおいてもインサートワーク(メタル)を、取出機のインサートチャックが受け取れるように用意するインサートメタル供給機が必要になります。
これらのインサートワーク供給機は基本的に取出機とセットで使用され、受け取ったラベルやメタルは、取出機が成形品を取出す同じ動作を利用して金型内にセットされます。
後工程機
成形後工程では、成形品を次の工程へ受け渡す搬送作業や、品質確認、梱包などを自動化することができます。
射出成形機から取出した製品を、そのまま加工や組み立て、検査などを行う場合のほかに、成形品以外の部品を含む多数の部品を組み合わせて組み立てる場合など、成形機とは切り離して別の場所で作業を行う場合があります。

製品搬送
簡易的なシステムでは、射出成形後に取出機により成形機の外側まで搬送し、成形機の横に設置したコンベア上に置いていきます。
そのままコンベアを伸ばすことにより多数の成形機からの成形品を集約したり、ランナー(金型内の樹脂の通り道で固まった不要部分)を粉砕のために別室へ搬送する等が可能です。
取出機によって、位置をずらしながら製品を置いていく(パレタイジング)ことや、コンベア上に成形品を積み上げていくこと、さらに取出機からの信号によって特定のショット数(成形回数)ごとに間欠的にコンベアを動かすことなども可能です。
製品検査
カメラによる画像検査や、放電を利用したピンホール検査など、成形品のキズや成形不良、インサートラベルの位置ずれなどを自動で確認します。不良品を検出した場合には、排出シューターなどで良品と振り分けることも可能です。
袋詰め

製品を袋へ包装し、袋を溶着によりシーリングする工程を自動化します。1つずつ包装する場合のほか、積み上げてから袋詰めする場合もあります。
また、袋の供給方法も、袋状になっているものだけでなく、プラスチックシートから装置内で袋状にシールする場合もあります。包装作業の効率化だけでなく、作業者による包装状態のばらつきを抑えることができます。
箱詰め

完成した製品を指定された数量ごとに箱へ入れる工程を自動化します。成形品の形状および箱の大きさ、箱詰めの仕方によって装置もさまざまです。
例えば、食品容器などを一度ある段数まで積み重ねてから箱に投入していくケースや、平面に並べてから箱詰めして、間にシートを挟むケース、特殊な形状のものでは1回ごとに向きを変えて箱に投入するケースなどがあります。
空箱の供給装置と箱詰め後の箱(実箱)のストック装置も合わせて設置することにより長時間の無人運転が可能になります。
ストック
自動化された設備で無人で運転できる時間は、インサート品の供給数や、空箱の供給数、完成品のストック量など、自動化工程前後で人が行う作業がどのくらいの頻度で発生するかに依存します。
特に、自動機によって箱詰めされた段ボール箱は、次のトラックによる出荷(あるいはラインから人が箱をピックアップする)までどこかに保管する必要があり、これを自動的にコンパクトに収納しておく装置がストック装置(ストッカー)です。
空箱の供給装置も兼ねていることが多く、空箱を製品投入位置に供給して、製品を入れ終わったら実箱をストックする流れになっています。
ゲートカット
取出機のチャックで成形品を保持したまま、エアニッパーなどでゲート(成形品に残る樹脂の注入口部分)を切断します。取出しと同時にゲート処理を行えるため、別工程として行っていたゲートカット作業を削減できます。
ヒンジ曲げ
ボトルの蓋のように取出し直後に折り曲げが必要な製品のヒンジ曲げ加工を自動化することもできます。後工程の手作業を減らし、生産ラインの効率化につながるだけでなく、成形直後の一定のタイミングで熱いうちにヒンジ曲げを行うこと自体がこの製品の特徴になり、また品質も向上します。
組み立て

成形品以外の部品も関わる複数部品の組み立ての場合、成形とは別の自動組み立てラインを設置する場合もあります。
部品の供給はパーツフィーダー(部品を自動で整列・供給する装置)などで行われ、プラスチック成形品のほかにスプリングやチューブ、金属部品を組み込んだり、グリスの塗布、各種検査などを組み込むことで大きな組み立てシステムが構成されます。
半自動機
自動化は必ずしもすべて自動化すれば良い場合ばかりではなく、コストや効率の面から人間が作業したほうが合理的な場合も多く存在します。
このようなとき人間が行う作業の一部を自動化する、半自動という選択肢があります。例えば、機械への部品のセッティングは人間が行い、その部品への加工を自動的に実行する等があります。
セッティングまで自動で行うには設置スペースや生産数の面で費用対効果が合わない場合に検討されます。
自動機を導入する際の注意点
多くのメリットがある一方で、自動機を導入する際には次のような点に注意が必要です。
- 初期費用と費用対効果の検討
- 製品や生産条件の変更への対応
- 保守・メンテナンス体制の確保
- 新たな危険源やコンタミネーションの発生
- 新しいスキルや教育の必要性
初期費用と費用対効果の検討
自動機の導入には初期投資が必要です。削減できる人件費や生産量の向上効果を踏まえて、費用対効果を検討することが重要です。
設備導入にあたっては、国や自治体による補助金・税制控除制度の対象となる場合もあるため、活用を検討するとよいでしょう。
製品や生産条件の変更への対応
自動機は特定の製品・工程に合わせて設計される専用機のため、製品の形状や生産条件が変わった場合には、装置の調整や改造が必要になることがあります。
長く活用するためには、導入後の改造やカスタマイズに対応できるメーカーを選ぶことが大切です。
保守・メンテナンス体制の確保
自動機を長期間安定して稼働させるためには、定期的な点検や保守が欠かせません。導入後のサポート体制が整ったメーカーを選ぶことで、設備停止のリスクを抑えられます。
新たな危険源やコンタミネーションの発生
歴史的には取出機の導入により金型への挟まれ事故は劇的に少なくなりましたが、一方で産業用ロボットによる事故が発生しています。
自動化装置についても、一般的に人間よりも力が強く、金属で構成された高速で動く機械は非常に危険であることの認識が必要であり、リスクアセスメントとスリーステップメソッド(リスク低減の3ステップ)による安全対策が必須です。
また、クリーンルームで自動機を導入することにより人の出入りが減りますが、一方で装置の摺動部や排気からの粉塵など、自動機から発生する汚染源について検討・対策する必要が出てきます。
新しいスキルや教育の必要性
組み立て作業担当者が、この作業が自動化されその装置の担当となる場合など、組み立て作業とは全く別のスキルが必要となります。
作業内容については精通しているわけですが、これに加えて装置自体の日常メンテナンスや調整等が必要になり、担当者のリスキリングが必要になります。
セーラー万年筆ロボット機器事業部の自動機の特徴
セーラー万年筆ロボット機器事業部では、お客様のニーズに合わせた自動化装置の設計・製作を行っています。人手による作業を自動化することで、生産性や品質の向上に貢献するだけでなく、安全性の向上や環境負荷の軽減にもつながります。
最後に、セーラー万年筆ロボット機器事業部の自動機の特徴を紹介します。
▼セーラー万年筆ロボット機器事業部の自動機
ニーズに合わせた設計
セーラー万年筆ロボット機器事業部では、工場の自動化を担うさまざまな自動機を製作しています。お客様の製品と生産ライン、設置環境等に合わせたオーダーメイドで3,800件を超えるさまざまな製造現場のニーズに対応してきました。
既存ラインへの導入や工程改善にも対応可能です。
一貫した自動化をサポート
自動化を成功させるには、単体の設備だけでなく、製造工程全体を考慮したライン設計が重要です。
セーラー万年筆ロボット機器事業部では、プラスチック射出成形の前工程から後工程、独立したシステムに至るまで一連の自動化に対応しています。
まとめ
自動機とは、人が行っていた製造工程を自動化する設備であり、生産性向上や品質安定、人手不足への対応に役立ちます。製造現場ではさまざまな場面で活用されており、効率的な生産ラインを構築するために重要な役割を担っています。
セーラー万年筆ロボット機器事業部では、3,800件を超える自動機の実績をもとに、お客様の製品や生産ラインに合わせた自動機の設計・製作を行っています。「この工程を自動化できるか相談したい」という段階のご相談も歓迎です。自動化をご検討の際は、お気軽にお問い合わせください。
▼セーラー万年筆ロボット機器事業部の自動機
参考資料:
- 厚生労働省(旧労働省)『労働災害統計(労働者死傷病報告)』(昭和40年代~昭和50年代各年版)
- 中央労働災害防止協会(JISHA)『プラスチック製品製造業における労働災害発生状況と安全対策』
- 一般社団法人 日本産業機械工業会 安全委員会『射出成形機等の安全対策及び事故実態に関する調査報告書』(昭和50年代刊行)